小さな飲食店でも、大企業でも、
「ブレない」ことはとても重要です。
Rutile Desginに依頼してくださる方は
明確な想いや目的がある方が多いので、
その目的にそぐわない客層へ無理にアプローチすることはありません。
言い換えれば、不要な客層は「捨てている」のです。
あれもこれもと欲張って、あらゆる客層に
媚びるようなデザインやコンセプトは
結局「矛盾」や「無難」を作り出すだけなのです。
先日スープストックトーキョーの炎上騒ぎがありましたね。
炎上と言っても、ほんの一部の人が
ツイッターなどで騒いでいただけで
スープストックが悪事を働いたわけではありませんが…
簡単に言うと、スープストックトーキョーが
無料で離乳食の提供を始めたら、
今までおひとり様で楽しんでいた人が
子連れ客の増加によりゆっくり食事が楽しめなくなった、
ということを悪意ある一部の人によって
誇張されたりした結果SNS上で大騒ぎになった、
という感じだったと思います。
そこでスープストックトーキョーが出した声明がこちらです。
ネットニュースなどでは、この声明文に対する称賛が多かったです。
しかしながら私は正直、大間違いの声明文ではないものの、
大正解の声明文だったかというと、ちょっとモヤモヤする感じでした。
声明を要約すると、スープストックトーキョーは
「世の中の体温を上げる」という素晴らしい理念のもと、
「Soup for all!」をコンセプトに咀嚼が難しい人、
グルテンフリー、ベジタリアン、ハラル(現在は終了)など、
様々な事情や主義の人全てに美味しいスープを食べてほしいという、
食のバリアフリーに取り組むことを重視している企業なのだそうです。
その一環で離乳食の無料提供を始めたとのこと。
外出先で離乳食の無料提供があるのは
赤ちゃんを連れている多くの親にとってとても
ありがたいサービスであることは間違いありません。
そして、「世の中の体温をあげる」という理念ともあいまって
とても素晴らしい活動のように思えます。
しかし私が最終的にモヤっとしたのはこの一文です。
《私たちは、お客様を年齢や性別、お子さま連れかどうかで区別をし、
ある特定のお客様だけを優遇するような考えはありません。》(抜粋)
これは全くその通りで、スープストックトーキョーには
お子様連れを優遇し、おひとり様をないがしろにした、
という意識は無いと思われます。
理屈で言うと子連れ客が多くいても、おひとり様もお店に入ることは
決して不可能ではないからです。
しかしながら、スープストックトーキョーは見たところ
お店のつくりや席のレイアウト、デザインなどからして
元々子連れ客よりも1~2人の女性客をターゲットにしている
お店だと思います。
事実、離乳食の無料提供に伴いSNSでは
これからはスープストックトーキョーでゆっくり
ごはんが食べられなくなる~というおひとり様の声が多いようでした。
このように、離乳食の無料提供によって
今まで店に訪れなかった子連れ客は当然増えると思いますが、
今まで店に訪れていたおひとり様は行きにくくなる、
という状態になったのです。
特定のお客様だけを優遇するような考えはありません、
と言いつつも結果として子連れ客を優遇し、
おひとり様を捨てた形にどうしてもなってしまいます。
そのこと自体は先に述べたように悪いことではないと考えます。
しかし、もともとおひとり様狙いの内装や
レイアウトにしていたにも関わらず、
というところが私はひっかかります。
その時点で「Soup for all!」では無いのではと思ってしまいました。
それならいっそのこと、
「世の中の体温を上げる」をコンセプトに
大変な思いをしているママさんたちのために
離乳食を無料提供するので、これからは子連れの
お客さんにたくさんきていただきたいです。
(今までターゲットだったおひとり様は他のお店に行ってください!)
ということをマイルドに言った方がわかりやすくて
良かったのでは?と思ってしまいました。
「Soup for all!」も「世の中の体温を上げる」も
とても素敵な理念だと思います。
ただ、特定の客を優遇しないといいつつ結果的に
子連れ客を優遇し、今までお金をおとしてくれていた
おひとり様が行きにくくなる状態を作り出したことにより、
立派な理念もキレイゴトのように私は感じてしまいます。
世論ではこの「世の中の体温を上げる」という
立派な理念に誤魔化されて素晴らしい声明文だ!という
意見が多いように感じます。
私も離乳食の無料提供はほんとうに素晴らしいサービスだと思うのです。
お店を展開した時はオシャレな雰囲気でゆっくり温かいスープが
楽しめるお店、というコンセプトだったはずです。
少なくとも建築的にみるとそのように感じます。
元々子連れ客重視のレイアウトやデザインには見えないので、
当初は子連れ客は「捨てた」ブランディングだったと思います。
それが、突然今まで「捨てた」はずの子連れ客重視のサービスを始め、
おひとり様向けの箱に子連れ客を無理に入れ始めたように私には見えてしまいます。
そこが私にはブレているように感じ、
特定の客を優遇はしていないということによって
おひとり様にも子連れ客にも媚びた結果、
消化不良な矛盾を生み出していると思います。
せっかく「離乳食無料」という素晴らしいサービスを実行するのならば、
より効果的な状態で実行すべきだったと思いますが、
大きな会社になるほど客観視が難しかったり、
「偉い人」がたくさんいるので意見がわれてブレやすい傾向にあります。
飲食店はたくさんあります。
ある程度都会なら子連れでも、ベジタリアンでも、
選択肢はたくさんあるので、多くに媚びるよりも
特定の客層に特化してそれ以外の客層を捨てた
潔いコンセプトの方がいわゆる「長生きする店」に
近づけるのではないかと私は考えます。
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